「……くくっ、変な顔」



図書室でじっくり本を読んでいた私は、横で馬鹿にしたような笑みを浮かべる男性に気付かなかったのだ。


気付いた時には遅く、私はその人から変な目を向けられたことが恥ずかしくなり、顔を真っ赤にする。



「その本、超簡単な解剖のなのに……あはっ、おかしいな~…」



まるで夜空のような濃い紫の髪に、美しいアメジストの瞳をしていたその人は、私が不愉快になるまで笑い続ける。


私はむっと口を尖らせると、「だって、私医療者じゃないので」とその人に吐き捨てる。


まさか言い返してくるとは思わず、その人は少し驚いた表情をしていたのだ。



「ごめんごめん、あんまりに真剣に見てたから研修医かなって思って」


「………」


「あ、もしかしてうちの患者さんだった?
なら申し訳ない」



どちらも違いますけど。


なんて言い返す気力も無いが、名札を見るにこの病院の医師であることは間違いなさそうだ。


名札に目線が集中すると、その人は自慢げにわざとソレを見せつける。



「どーも初めまして、当病院でドクターをしている【クロイ・トワイライト】です」