「どう?少しは自分のこと、思い出せるかしら」


「いえ、まだまだ全然……。
正直前途多難すぎて、思い出せるのかも…」


「ゆっくりでいいのよ。
それにアタシ、ユマと過ごすのは大好きだから…すぐにいなくなってしまうのは寂しいもの」



アリアは今、医師の仕事を休んでいる。


だから私に構ってくれる頻度も多ければ、私のために料理の練習もしてくれている訳で、感謝も大きい。


しかし、私はアリアの部屋を掃除する際に、薬の入った小瓶を見つけてしまったのだ。


それは鎮静作用の入った、抗精神病薬であった。




アリアの心が病んでしまっているのは、多忙な医師の仕事が原因か、はたまたそうではないのか。


私は薬を見なかったことにして、アリアの心には触れていない。


でもアリアに救われた以上、私はアリアの側で助けたいという気持ちが芽生えているのを、ひしひしと感じた。


優しい人がどうして辛い気持ちを背負わないといけないのか、理解に苦しんだからだ。