──『天使様は、どこか行きたいところはある?』


──『そう言われると悩むわね…強いて言うなら“海”かしら』


──『“海”か、いいね。
俺実は海で泳いだことがないんだ。
きっと冷たくて気持ちいいんだろうね』





海なんて広大なものを掲げながら、アイテルは最期まで【ヘメラ】の籠の鳥だった。


ふと、私の口から「海」と単語が漏れた。



「…海へ、行きたいです」



この辺りに海なんてあるか分からないのに、無神経なことを言ってしまっただろうかと口を噤む。


しかし私とは対照的にアリアは賛成してくれ、明日の予定に“海へ行くこと”が加わった。



「海はいいわよね~!アイスでも食べちゃう?」


「私、ソーダ味がいいです!」


「あらやだ、サイコーじゃない!
アタシはチョコミント食べちゃうんだから!」



きっと明日は私にとっていい日になるだろうと確信して、アリアと過ごす日々は、本当に素敵なものであった。