「じゃあ、アタシの話をさせて貰おうかしらね」



すぐに纏まった返事が出せず、煮えきらない返事をする私を見かねたのか、アリアは自身のことを話し出した。


アリアのルビーのような瞳が、少しだけ潤んでいく。



「アタシの専門は“心臓移植”なの。
一度でも聞いたことがあるでしょう?」



私はこくりと頷く。


心臓移植といえば、かなり難易度の高い手術だろうというのは、素人の私でさえも分かっていた。


私が思っている以上にアリアは、凄腕の医師であるんだろう。





アリアは私に語る。


心臓移植をする時、まず胸骨を分断するため、前胸部に真っ直ぐな傷跡が残る。


それは決して大きなものではないが、目立たない傷というわけでない。


それでいて特徴的であるため、その手術を理解できる人間であれば、すぐに気付いてしまう。





傷跡は、過去の医師が残した治療の証とも言われている。