「天使様も、もう外で何が起きているのか気づいているんでしょ?」



窓の外から覗く黒煙。


悲鳴にも近い信者たちの声。


木と肉が焦げる音。


そして、鳴り響く爆発音。



恐らく、長らく作られてきた兵器か何かが炎上したのだろう。


それも偶然じゃない、きっと故意にだ。



「…火災が起きてる、早く逃げないと」



君は運命を司る天使ではないから、肩を少しずつ震わせて、焦っている様子がよく分かる。


元の人間の感覚が、やはり天使にも備わっているのだろう。


触れられないから、何も感じないから、と言ってもやはり想定外のことには防衛反応が働いているのがその証拠だ。


だから、君は俺がきっと「逃げよう」と言うのを望んでいる。



「うん、そうだね」



──賛同するような返事はできても、そこに決意はない。


悲しいことに君が望むような返事が出来なくて、からからに渇いた笑みだけが、漏れていくだけだった。