「貴方は死にたいんでしょう?」


「そうだね、俺は生きているだけで
沢山の罪を犯しているから」



「なら、絶対に貴方は死なせないわ」



私は運命を操る女神(モイラ)ではない。


大天使に命じられて降り立っただけの、天使だ。


だけど私は貴方たちを、破滅へと導かなければならない、悪魔のような役目を担っている。


地上の安寧の為には、失敗など許される筈がない。


心は鬼にしなければならない、だから私は死にたい貴方に、“生きる”という選択肢をあげるの。



「“生きなさい”、何があっても。
悲しくても苦しくても、それを噛み締めて過ごしなさい」



いつの間にか、祭壇の外から降り注いでいた雨は止んでいた。


硝子に付着する雫が滴る様は、まるで貴方が流す涙のようで。


美しくて、すぐに消えてしまって…それでいて儚い。





アイテルは、私の言葉を聞いて、にかっと歯を見せるように笑った。


(そんな意地悪そうな顔も出来るのね)と思ったのはつかの間で、貴方は私の目と鼻の先にいた。