「これでようやくあの子の世話が終わるわ。
あなた、あの子と結婚してくれるのよね?」



予想だにしない発言に俺は思わず、目の前にいる女性に対して怒りが湧いた。


溜め息を吐かれたことは勿論だったが、言葉の一つ一つは到底ユマへと聞かせられないものであった。



「……いずれは、きちんとした関係になりたいと考えています」


「そう、ならもうあの子を貰って頂戴。
はぁ……移植するなんて予想外だったわ」



俺は世界にいる親と呼べる生き物が全て、尊くて綺麗な存在をしているとは到底思えない。


けれどユマの母親は、君を“あの子”と呼んで卑下するのだ。


俺の家庭環境もそれほどいいとは言えないが、今これだけは分かる。


ユマはきっと心臓と一緒に目の前にいる女性に苦しめられていて、隠れてずっと死にたがってたんだと。



「どうして」



俺は思わず口から漏れてしまった。


疑問だった、何故ユマの母親は、こんなにも子供のことを愛することが出来なかったのか。



「どうして、ユマを傷つけるようなことをおっしゃるんですか」