「ハリードクター、ハリードクター。
A棟4階、手術室までお願いします」



その日は妙に病院内がバタついており、患者の急変を現す緊急コールもなっていた。


緊急コールを合図に看護師が足早に階段を駆け抜ける音が聞こえ、心の中で(大変だな)と感じつついた。



「今日のOPEって、一例だけしかなかったわよね…」


「その一例って双子の……」


「やだ……そしたら二人とも危ないのかしら」



ナースステーションから漏れる声は俺の耳に届くが、詳細は分からない。


なるべく聞かないようにしようとユマに話し掛けるが、看護師の声と同時に、複数人が部屋へと向かってくる音が聞こえてくる。



(なんだ、この妙な気配は……)



他患者の急変は俺たちには関係ないはずなのに、妙な胸騒ぎがした。


この日を境に運命が変わってしまう、そう思わざるを得ないような、そんな。



「ユマ・オーウェンさんと、クロイ・トワイライトさんですね」



部屋に突然入ってきたのは、俺が見覚えのある医師であり、目を丸くしてしまう。