「せん、せ…きて、くれたの……?」




ユマがニュクス大学病院に転院し、面会するために病室へと足を運んだ時であった。


ユマは倦怠感があるからか、ぼんやりと目を開けつつそのまま意識を失ってしまっていた。


君と話せなくてもいいから側にいたいと思い、君の手をそっと握るが、握り返してはくれなかった。


そっと橈骨動脈を触れると、ドクドクと伝わるこの感触だけが全ての頼りであった。



ユマの状態は転院してから、緩やかに悪化していった。


心臓移植のドナーを待ち続けているが、一向に現れず、俺はただひたすら苦しみ続ける彼女を見続けることしかできなかった。


カテーテルに、バルーンに、モニターに、CV。


君の身体から伸びる無数の管を見るたびに、やるせない気持ちになってしまう。



「ユマ、俺しばらく仕事を休んだんだ」



ユマは眠りについており、俺はただひたすら君の白い顔に向かって話し掛ける。



「これからは毎日来るよ、ずっと隣にいるから」



血色の薄れた顔をそっと撫でて、頬にキスをする。


その時、彼女の口角がほんの少しだけ……上がった気がした。