それから俺とユマは、幾多の日々を過ごした。


病室で18歳の誕生日を祝ったり、手作りのブローチを彼女から贈られたり、手紙で秘密のやり取りをしたり。


いつしか彼女の優しさに触れて、俺自身も変わっていき、お互いに惹かれあうようになった。



「私、クロイ先生が好きなんです…」



泣きながらそういう彼女は、俺に告白をするために長い前髪を切ったようで、愛おしさを感じて思わず抱き締めてしまっていた。


俺が生まれて初めて、誰かと心を通わせた瞬間なのかもしれない。


彼女の温もりはとても柔らかなもので、蝋燭の火のようにすぐに消えてしまいそうだった。



「俺も好きだよ、ユマ」



けれどこの余りにも儚い少女を、ずっとずっと守っていこうと、俺は固く誓ったのだ。


彼女の心臓が彼女自身を苦しめようが、俺は戦ってみせると、医師人生全てを賭けようと拳を強く握りしめた。





けれど運命は余りにも無情なもので、彼女は心不全を繰り返していき、移植が必要な状態となってしまった。


これから先は、俺の力では無理だった。


大学病院への紹介状を記載しているとき、俺の涙はキーボードへと落ち、指先は震えていた。



「……おかしいよな」