彼女の瞳は青かった。


宝石に例えるならサファイアだ。


光によって煌めきを変えていき、見る人全てを魅了する。


瞳を見つめて息を呑んだのは初めてであった。



「…先生?」



彼女にそう呼ばれて俺は、心を奪われていたことに気付く。


綺麗だということを率直に伝えると、彼女の瞳孔は猫のように大きく開いた。



「この辺りで青い瞳は珍しいから、親から気持ち悪いって言われるんです。
でも、先生みたいな人に出会えてよかった」



そう言って微笑む彼女に釘付けになってしまい、俺は必死に欲求を抑えていく。


彼女の長い前髪を勿体ないと感じたが、それ以上に(この瞳が他の人に見つかって欲しくない)とも思ってしまう。


まるで金の卵だ。


人を魅了する素質がある。



「気持ち悪くなんてないよ」



彼女は花が咲いたように嬉しそうに微笑んでみせる。


比護欲と、独占欲が混ざりあって不思議な気持ちだった。


彼女が診察室から去った後も、俺の頭の中は彼女のことでいっぱいであった。