ぺこりと深々頭を下げる彼女の前髪は、瞳を完全に覆い隠しており、顔色が見えない。


貧血のチェックだけしておくかと、彼女に話しかけたが、何故か頑なに拒否をするのだ。



「…大丈夫?ごめんね、こんなこと聞いて」



彼女は必死に瞳を隠そうとするものだから、聞かなければよかったとその時に後悔した。


彼女の手は微かに震えており、ちらっと見えた唇はぎゅうっと噛み締められている。


きっと、何かあるんだろうということだけは分かる。



「私、瞳の色がおかしいらしくて」


「そっか……無理しないで大丈夫だよ」


「いえ、私の先生ですもん。
ちょっと待ってくださいね……」



落ち着いた彼女は、おずおずと前髪を掻き分けた。


ちらりと彼女の瞳の色が見える。



(………っ)



それは今まで、俺が感じたことのない胸の高鳴りだった。


蝶の羽ばたきのように白い睫毛が瞬き、目に嵌め込められた美しい宝石が露となる。