「初めまして、ユマ・オーウェンです。
診察よろしくお願いします…!」



彼女は俺に向かって思いっきり診察ファイルを突き出して、ペコペコとお辞儀していた。


診察ファイルの中には紹介状が入っており、封筒の表紙には【ニュクス循環器科センター|クロイ・トワイライト先生御机下】と書かれている。



(おいおい、正気か……?)



まず紹介状の宛名が俺なのは別として、アナウンス無しに診察室へ入ってきたので、俺は間抜けな返事しか出来なかった。


とりあえず、【ユマ・オーウェン】と名乗る女の子を診察室の椅子に座らせ、話を詳しく聞くことにする。



「えっと……うちの病院は初めてだったから分からなかったのかな?
まだ呼んでないけれど…」


「え、あ…すみませんでした。
看護師さんに先生の場所を聞いたらここだと言われたので…」



なるほどと納得する。


医師の入れ替りが激しいここでは、看護師が新任の医師を把握できていないんだろう。


俺も外来の構造に夢中であったため、彼女がノックしていたとしたら気付かなかったであろう。


俺は紹介状を受け取り、内容を電子カルテに転記していく。