「少し落ち着いたね、良かった」



クロイの一言で、いつの間にか涙が止まっていたことに気づいた。


ココアの甘い匂いと、キャラメルマキアートの香ばしい匂いがぶつかって、私は柔らかな気持ちになる。



「すみません、お金は出すので…」


「いいよ、これくらい。俺も喉渇いてたし」



クロイが注文したものは他にもあるようで、テーブルに続々とスイーツが並んだ。


クレームブリュレ、ティラミス、シフォンケーキ……成人男性が食べきれるか危うい程来たスイーツを、クロイは嬉しげにスプーンで頬張っていく。



「ユマさんも何か食べる?」



流石にスイーツを食べ進める人の前で何もしないわけにはいかず、私はおずおずとメニューのスイーツを指差した。



「へ~、プリンが好きなんだ。可愛い」


「…可愛いんですか?」


「うん、ユマさんが好きなものは何でも素敵に見えるよ」



以前の意地悪な彼とは打って変わって、今日の彼は優しかった。


それはきっと私が、慰めようとしてくれているくらい、落ち込んでいるからだろう。