ミステリH ⑤
5月25日(土)
ハミルはタスイとのカフェでのお茶の後、
帰宅した
15:00から一時間ほどカフェで過ごし、
スーパーで夕食を拵えて17:30に靴を脱いだ
わかったことは、ナツコに恋心がある男がいたこと
マンバが繊細なハートの持主であるということだった
アリバイの件は、タスイに丸投げということになった
タスイの性格からするとあっさりと直球で質問して、あっさりとアリバイを掴んでくるかもしれない
ん?
なんと聞くのだろう。
ふと頭をよぎった
もしや、この私がラブレターを受け取って必死に探し回ってるなどと言われたら、関係ない人間にも話しが広まってしまうのではないか
もっと綿密に計画を相談すれば良かったか
連絡しようか
気になったが任せることにした
向こうの方が人間関係は密だし、一度お願いした案件をあれこれと言い出すのも良くない。今はタスイに気持ち良く仕事をしてもらうことを優先した
本命のチナナのことはあまり聞けなかった
あまり突っ込んで聞くと、自分の恋心を悟られるような気がしてわざと避けた
あの頃から何も成長していない自分に虚しさを感じた
チナナのことを考えると胸が苦しくなった
今頃あのファミレスの厨房で調理をしているのかな
彼女の作った肉じゃがを想像し、口の中に少しの甘さを感じた
妄想上の恋人となったチナナを思い出し、ベッドの引き出しに仕舞った"好きです"を取り出した
胸が鼓動を刻む。この四文字のフックに完全にノックアウトされたハミルは、どっちが"好きです"なのか分からなくなった。
見えない愛手を上回る想いを抱え、彼は"六文字"を呟いた
"だいすきです"
枕を強く抱きしめて、チナナ、チナナ
そのまま不純な慰めをしようと想いがよぎったがやめた。
これ以上、彼女を汚すことはできないと、紳士の端くれは思った。
数分後には、違う材料を拵え、ただの端くれになっていた。
・・・・
5月27日(月)
タスイは早くも動いた。
チナナが27日の夜はシフトが入ってないことを確認して、約束を取り付けていた。
PM7:00に熱田に構える大型ショッピングセンターで待合せをした。
「チナナ!」
「タスイ久しぶり」
4Fにあるレストラン街の中央に置かれたソファだった
「ごめんな、急に」
「いいよ、何食べる?」
「とんかつは」
「よし」
2人のゼツはトンカツで呼応し店に入った。
店員が窓際のテーブルに案内した。
メニューを眺めて、外を打っている雨の音が6月の訪れを鳴らして、共に"アジサイ"を注文した。
近況報告などをして、先出しのアイスティーに口をつけた。
タスイは目的にはまだ触れない。
紫陽花が運ばれてきて、2人は他愛もない会話を挟みつつ、四葩を綺麗にストマックで咲かせた。
「チナナいいことあった?」
「うん、特に、普通だよ、タスイは?」
「私も、特に」
「ダイヤはどうなのさ?」
「ダイヤ、そうやな」
「何回だっけ」
「この前6度目、2週前やな」
「増えてるし、どうしたの?」
「断ったで」
「ふーん、なんで、めちゃくちゃ喜んでたのに、最初の時」
「それはな」
「仕事?」
「うん、ダメになるやろ、あいつ」
「続かないからね、仕事」
「うん」
「嬉しくないの?」
「嬉しいに決まってるやろ、毎回飛び跳ねそうや」
「好きなんでしょ」
「まあ、もうやめてほしいわ」
「なんで」
「こっちが持たへん。付き合ってしまう」
「ふーん、いいなあ」
「アンタは、チナナ」
「うーん、駄目、取られたし」
「取られた?」
「うん」
「美咲か?」
「ハハッ、はい」
「そうか、そうなんや」
「魔性にやられたわ」
「美咲か、ダイヤも前やられたしな」
「誰でも行くからな」
「そうやな、可愛いしな」
「男の前では」
「美咲?」
「うん、何」
「クルムと付き合ってるんやんな」
「そうだよ、好きだったんだけどな」
「なんでクルムも引っかかるんやろ?」
「魔性だから。うまいよ、やっぱり甘え方とか。できない」
「そうやな」
「はあ」
「誰かおらんの?」
「えっ」
「クルム以外には、ほら、ハミルとかは、最近仲良いとか」
「ハミル?」
「例えばだけど」
「いや、そういう相手とは考えたことないよ。いい人だなとは思うけど」
「そうやな」
「好きなの?」
「私?ちゃうちゃう、たまたま浮かんだだけや」
「ハミルか」
「あり?」
「うん、ない」
・・・
チナナ、チナナ
・・・
タスイは他愛もない会話の際に、チナナの仕事のシフトの状況を確認しており、先週の火曜日は昼から夜まで仕事だったことを確認していた。
・・・
(ハミル、起きてる?
チナナと話せました)
(タスイさん、ありがとうございます
チナナ、どうでしたか!?)
(それとなく聞いたんやけどな。
21日(火)は昼から夜まで仕事してた。)
(本当ですか?そうですか。
わかりました。ありがとうございます。
チナナではなかったですか。知れて良かったです。
前進しました。本当にありがとうございます。)
(うん、なんか、ゴメン)
(いえ、ありがとうございます)
ゴメンの響きがハミルの闘志に火を付けた。
もう関係なかった。
六文字を決行する。
#ハミル
#タスイ
#チナナ
#ミステリH
5月25日(土)
ハミルはタスイとのカフェでのお茶の後、
帰宅した
15:00から一時間ほどカフェで過ごし、
スーパーで夕食を拵えて17:30に靴を脱いだ
わかったことは、ナツコに恋心がある男がいたこと
マンバが繊細なハートの持主であるということだった
アリバイの件は、タスイに丸投げということになった
タスイの性格からするとあっさりと直球で質問して、あっさりとアリバイを掴んでくるかもしれない
ん?
なんと聞くのだろう。
ふと頭をよぎった
もしや、この私がラブレターを受け取って必死に探し回ってるなどと言われたら、関係ない人間にも話しが広まってしまうのではないか
もっと綿密に計画を相談すれば良かったか
連絡しようか
気になったが任せることにした
向こうの方が人間関係は密だし、一度お願いした案件をあれこれと言い出すのも良くない。今はタスイに気持ち良く仕事をしてもらうことを優先した
本命のチナナのことはあまり聞けなかった
あまり突っ込んで聞くと、自分の恋心を悟られるような気がしてわざと避けた
あの頃から何も成長していない自分に虚しさを感じた
チナナのことを考えると胸が苦しくなった
今頃あのファミレスの厨房で調理をしているのかな
彼女の作った肉じゃがを想像し、口の中に少しの甘さを感じた
妄想上の恋人となったチナナを思い出し、ベッドの引き出しに仕舞った"好きです"を取り出した
胸が鼓動を刻む。この四文字のフックに完全にノックアウトされたハミルは、どっちが"好きです"なのか分からなくなった。
見えない愛手を上回る想いを抱え、彼は"六文字"を呟いた
"だいすきです"
枕を強く抱きしめて、チナナ、チナナ
そのまま不純な慰めをしようと想いがよぎったがやめた。
これ以上、彼女を汚すことはできないと、紳士の端くれは思った。
数分後には、違う材料を拵え、ただの端くれになっていた。
・・・・
5月27日(月)
タスイは早くも動いた。
チナナが27日の夜はシフトが入ってないことを確認して、約束を取り付けていた。
PM7:00に熱田に構える大型ショッピングセンターで待合せをした。
「チナナ!」
「タスイ久しぶり」
4Fにあるレストラン街の中央に置かれたソファだった
「ごめんな、急に」
「いいよ、何食べる?」
「とんかつは」
「よし」
2人のゼツはトンカツで呼応し店に入った。
店員が窓際のテーブルに案内した。
メニューを眺めて、外を打っている雨の音が6月の訪れを鳴らして、共に"アジサイ"を注文した。
近況報告などをして、先出しのアイスティーに口をつけた。
タスイは目的にはまだ触れない。
紫陽花が運ばれてきて、2人は他愛もない会話を挟みつつ、四葩を綺麗にストマックで咲かせた。
「チナナいいことあった?」
「うん、特に、普通だよ、タスイは?」
「私も、特に」
「ダイヤはどうなのさ?」
「ダイヤ、そうやな」
「何回だっけ」
「この前6度目、2週前やな」
「増えてるし、どうしたの?」
「断ったで」
「ふーん、なんで、めちゃくちゃ喜んでたのに、最初の時」
「それはな」
「仕事?」
「うん、ダメになるやろ、あいつ」
「続かないからね、仕事」
「うん」
「嬉しくないの?」
「嬉しいに決まってるやろ、毎回飛び跳ねそうや」
「好きなんでしょ」
「まあ、もうやめてほしいわ」
「なんで」
「こっちが持たへん。付き合ってしまう」
「ふーん、いいなあ」
「アンタは、チナナ」
「うーん、駄目、取られたし」
「取られた?」
「うん」
「美咲か?」
「ハハッ、はい」
「そうか、そうなんや」
「魔性にやられたわ」
「美咲か、ダイヤも前やられたしな」
「誰でも行くからな」
「そうやな、可愛いしな」
「男の前では」
「美咲?」
「うん、何」
「クルムと付き合ってるんやんな」
「そうだよ、好きだったんだけどな」
「なんでクルムも引っかかるんやろ?」
「魔性だから。うまいよ、やっぱり甘え方とか。できない」
「そうやな」
「はあ」
「誰かおらんの?」
「えっ」
「クルム以外には、ほら、ハミルとかは、最近仲良いとか」
「ハミル?」
「例えばだけど」
「いや、そういう相手とは考えたことないよ。いい人だなとは思うけど」
「そうやな」
「好きなの?」
「私?ちゃうちゃう、たまたま浮かんだだけや」
「ハミルか」
「あり?」
「うん、ない」
・・・
チナナ、チナナ
・・・
タスイは他愛もない会話の際に、チナナの仕事のシフトの状況を確認しており、先週の火曜日は昼から夜まで仕事だったことを確認していた。
・・・
(ハミル、起きてる?
チナナと話せました)
(タスイさん、ありがとうございます
チナナ、どうでしたか!?)
(それとなく聞いたんやけどな。
21日(火)は昼から夜まで仕事してた。)
(本当ですか?そうですか。
わかりました。ありがとうございます。
チナナではなかったですか。知れて良かったです。
前進しました。本当にありがとうございます。)
(うん、なんか、ゴメン)
(いえ、ありがとうございます)
ゴメンの響きがハミルの闘志に火を付けた。
もう関係なかった。
六文字を決行する。
#ハミル
#タスイ
#チナナ
#ミステリH