私達はホテルの食堂で、賑やかに食事を楽しんでいた。

「あ! ジャンッ! それは私のお肉でしょう!?」

「何だよ。食べないんじゃ無かったのか? 皿に残っているから、いらないと思ったんだよ」

「違うわよ! 好きな料理だから一番最後に楽しみで取っておいたの! そ、それなのに脇から奪っていくなんて……」

食べ物の恨みは怖い。
ニーナは物凄い目つきでジャンを睨んでいる。

「え? そうだったか? ニーナは好きなものは一番先に食べるタイプじゃなかったか?」

「それはジャンの方でしょ! 何で双子なのに私の気持ちが分からないのよ!」

「肉ぐらい、いいだろう!? 大体俺は病み上がりだぞ!」

「そんなのはリアンナ様の力で、とっくに治っているでしょうが!」

うん、本当に賑やかなテーブルだ。
2人の口論を側で聞きながら、私は料理を楽しんでいた。

「リアンナ様、ここのホテルの食事はいかがですか?」

シーフード料理を食べているとカインが話しかけてきた。

「うん、最高に美味しいわ。特にこのエビが絶品ね」

「それは良かったです。他に何か欲しいものはありませんか? 何でもお好きな物を頼んで下さい」

「う〜ん。でも、そんなに沢山食べられないわよ」

「そうですか。あ、だったらデザートはいかがですか? 料理だけではなく、デザートも絶品ですよ」

カインは自分の食事もそっちのけで、私を気にかけている。

「私は大丈夫だから、カインは自分の食事をしてよ」

「僕なら大丈夫です。リアンナ様に喜んで食事をして頂けるのが一番ですから」

ニコニコと笑みを浮かべながらメニューを差し出してくるカイン。
う〜ん……何故、カインはここまで私に構ってくるのだろうか? もしかして私の護衛騎士だから?

「カイン。いくら今私の護衛騎士をしてくれているからって、そこまで面倒みてくれなくていいのよ? 大体、カインは本来殿下の護衛騎士なのだから」

するとカインは突然真剣な顔つきになる。

「リアンナ様、僕は……」

「あっ! カイン様! またリアンナ様にちょっかいだしていますね!」

そこへ口喧嘩を終えた? ジャンが割り込んできた。

「ちょっかいなんて、人聞きの悪い。僕はリアンナ様のお世話をしていただけだよ」

「お世話係なら私がいます! そうですよね!? リアンナ様!」

ジャンを押しのけてニーナが手を上げる。

「アハハハ……そうよね。ニーナが私のお世話係だものね。それでカインは護衛騎士」

私の言葉にジャンが恨めしそうな目を向けてきた。

「リアンナ様! 俺は? 俺はどうなんですか!?」

「えっと……御者?」

「ええっ!? そ、そんなぁ……御者だなんて……」

明らかに落ち込んだ様子を見せるジャン。

「え? え? だって、以前自分のことを御者だと言ってなかったっけ?」

「アハハハ……御者だってよ、ジャン」

「御者も立派な仕事だと僕は思うよ」

戸惑う私に、笑うニーナとカイン。
本当に今夜は賑やかな食事となり、私達は周囲の人々からすっかり注目されてしまっていた。


……そう、つまり私達は目立ちすぎてしまっていたのだ。
自分たちが追われているにも関わらず。


だから、あんなことになってしまったのだろう――