「護衛騎士ですか? カインが私たちの護衛騎士をすると言うのですか?」

「はい、そうです」

私の問いかけに頷くカイン。

「ですが、カインは殿下の護衛騎士ですよね? その人が私たちの護衛をするなんて、そんなことして大丈夫なのですか?」

「別にずっとと言う訳ではありません。国境を越えて、次の国に入国するまでの間です。……恐らくこの分だとずっと移動は荷馬車でされるつもりですよね?」

「ええ、そうですよ。リアンナ様は何故か荷馬車の旅にこだわっているんです」

カインの言葉に、リーナは肩をすくめる。

「ここ一帯はまだ治安も良いですが、その先では時々旅人を襲った強奪事件が起きています。なので護衛があった方が安心だと思うのですが」

「え? そうだったのですか?」

う~ん……どうやらこ平和な日本で暮らしていたので、危険意識が低かったようだ。

「あ、それは私も思っていました。何しろ、ジャンでは頼りになりませんから」

「う、うるさい。ニーナ! 確かに、俺は腕っぷしは全然駄目だけど……」

落ち込んだ様子を見せるジャン。

「旅人の中にはお金で護衛を雇う人たちもいますが、僕がついて行けばその必要は無くなります。お願いです、どうか次の国に入るまで同行させて下さい」

そしてカインは頭を下げてきた。

「どうします? リアンナ様。この人は、ああ言ってますけど……殿下の犬なんですよね?」

「私たちの後をこっそりつけていただけじゃなく、伝書鳩も使って報告していたのですよ? 信用していいものでしょうか?」

ジャンもニーナもカインを前に堂々と私に自分たちの意見を述べてくる。
その言葉に、カインは増々申し訳なさそうに俯いてしまった。確かに、彼は殿下に命じられて私たちを監視していた。
どうせ断っても、彼は私たちの後をついていくだろう。

だったら……。

「いいですよ。それでは次の国に入国するまで、護衛をお願い出来ますか? いいよね? ジャン、ニーナ」

二人の顔を交互に見比べた。

「リアンナ様の意見に従いますよ」
「私もジャンと同意見です」

「え? それでは……?」

カインが顔を上げる。

「はい。今日から暫くの間、私達の護衛と助手をお願いします」

「ありがとうございます! あの……ところで助手というのは……?」

「勿論、マジックの助手ですよ」

「ええ!? ぼ、僕に助手を……ですか!?」

私の言葉にカインは驚きの表情を浮かべた。

「はい、そうです」

カインは騎士にしておくのがもったいない程のイケメンだ。彼がマジックの助手をしてくれれば、さらに人が集まるかもしれない。

「分かりました。騎士の名にかけて、助手の仕事も頑張ります!」

「何もそんな大げさに考えなくても良いですから。気楽な気持ちでお願いします」

「いえ。いい加減な気持ちでは助手は務まりませんから。誠心誠意をこめて頑張りますので、どうぞ御指導の程よろしくお願いします」

何処までも生真面目なカイン。まるで体育会系のノリのようだ。
でも、これが彼の気質なのだろう。
何しろ私が城で全員から白い目で見られ、蔑みの言葉を受けてもカインだけは違った。きっと、誠実な人なのだろう。

「はい。こちらこそよろしくお願いします」

私は笑顔で返事をした――