でも夏休みの最後の方で、千尋が言うた。

まだ真夏で、蒸し暑くて蝉の鳴き声と一緒に泣きながら言うた。


「次、会ったら願い事教えてね」


俺は泣きそうになりながら必死に頷いた。

この約束がある限り、絶対次も会えると思ったから。

千尋と過ごした夏休み。

あの笑顔も、むすっとした顔も今まで忘れたことない。

表情豊かで、負けず嫌いで、線香花火に願い事したら叶うとか言ったのも信じるような、、、、




そんな千尋が、ずっと好きやった。




いい加減、気づいてるやろ。

今もめっちゃ緊張してる。

俺なりに必死や。

せやからまたあの時みたいに笑ってや。


「願い事」

「せえへん?」


気づいたら言ってた。

もう最後の二本になった花火の片っぽを渡す。


「いっせーのーで で願い事言わへん?」


あの時の約束ちゃんと守るから。

もう一回笑ってや。


「いいよ」


俺はその時、少し嬉しそうな顔をした彼女にあの時の面影を感じた。

なんや全然変わってへんやん。

5年前、俺が好きになった女の子やん。

お別れの日、渡した花の意味やっぱ、知らんかな。



「いっせーのーでっ」