なんでもっと愛想良くできひんのやろ。

千尋、全然笑ってへん。

せっかく誘ってくれたのに、なんで上手くできひんねん。

また2本の線香花火を取って片方を渡す。

もう、作業みたいやん。

もっとちゃんと話すつもりやったのに。

線香花火を渡した時、千尋の手が少し触れた。

やばい。


「ありがとう」


千尋、変わりすぎやろ。

昔はもっと表情、豊かやったのに。

今のも全く顔色変えてへん。

でもやっぱり鈍感なとこは変わってへんな。

いっつもドキドキしてんのは俺だけ。

こんなんで赤くなってんのは俺だけやった。

今もたぶん気づいてへん。

あの時の笑顔の千尋はどこいったん?

パチパチひかる線香花火。

たぶん、一生忘れられへん。




〄 〄 〄




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「ねえ、なんでお願いごと教えてくれないの?」

そう聞かれた時はいつも結構とまどう。

言うたら、千尋困るやろ?

俺、困らせるつもりないから。

なんて返せばいいかわからへんかった。

どうするんが正解かわからへんかった。


「ごめん」


ただそう言うしか思いつかへん。