「千尋、線香花火やろ」


高校生、夏。

5年ぶりに再会した。

あの時と同じ問いかけが懐かしい。

ろうそくの上から彼の腕がのびてきて、線香花火は私の元に届けられる。

大人っぽくなっていて、全然知らない人みたい。

それがなんだか気まずかった。

私はしばらく黙って線香花火を見つめる。


「どしたん」


それはこっちのセリフだよ。

本当、5年前と全然違う。


「あー、、、、夏希、変わったなって」


私の方が高かった背もいつのまにか抜かされていた。

ずっと、今日会えるのを楽しみにしてたのに。

あの時はもっと話しやすかったな。

もう高校生なんだから当たり前か。

私たちのいる河原は夜だからか涼しかった。

夏希は黙ったまま、線香花火に火をつける。

せっかく今日のために許可をもらって、また二人で花火できるチャンスなのに。

お互いに黙ったままで空気が悪い。

私もさっきもらったものに、火をつける。

他の派手な花火はさっきまで遊んでいた子供達にあげてしまった。

もう残った線香花火と虫の音しか聞こえない。

ねえ、あの時の夏希はどこに行ったの?

パチパチひかる線香花火。

やっぱりずっと忘れられない。




〄 〄 〄


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「千尋!線香花火どっちが長く続くか勝負や!」


また勝負って、、、、

どうせ私が負けるのになんでまたやんなきゃいけないの?