「これから通う学院では学生は皆平等で、貴族だからといって特別な待遇は受けられないらしいの。だから、ここから先はどうか独りで行かせて?」
「そうですか……それでしたら、わかりました」

 ようやく納得してくれたようだ。

「それじゃあ、」

 マルティーナが別れの挨拶を言いかけたところで、ダニエラはマルティーナを真っ直ぐに見つめた。

「長期休暇で帰省する前には、必ず連絡をくださいね。絶対に私が迎えに来ますので!」
「ありがとう」

 うっかりマルティーナの瞳は潤んでしまった。
 まだ自分に優しくしてくれる人がいたことを思い知らされたからだ。

(ごめんなさい。だけど、もう二度と戻るつもりはないの)

 ルーボンヌ神国に生まれながら、自然魔法を学ぶために留学するのだ。
 相応の覚悟はできている。

 マルティーナは正面から学院を見据えた。

(神学校に入学したときは、どんな気持ちだったかしら……)