とそこへ、大きな荷物を抱えた男子がこちらに近づいてきた。
 そうして、パウラのすぐ後ろまで来ると、カラッと明るい声を発した。

「よお、パウラも無事に着いたんだな」

 パウラは振り返らずに、マルティーナに紹介した。

「これがもうひとりの留学生」
「何なに、もしかしてもう友達できた? 俺にも紹介してよ」

 パウラの髪も濃いと思ったが、この男子学生はもっとだ。
 闇夜を思わせる漆黒の髪をしている。
 けれど、それ以上にこぼれる白い歯のほうが印象的だ。

「私たちと同じ留学生のマルティーナよ」
「へえ。マルティーナさんはどこの国から?」

 今度は身構えることなく答えることができた。

「ルーボンヌ神国からです」
「俺はパウラと同郷のウーゴ。よろしくね」

 ごく自然に差し出されらウーゴの手を、マルティーナは凝視した。

(これ……は、握手を求められてる?)