「持ってみ」
彼女に持たせて、その上から手を重ねるように持った。
「何触れてんの」
「何も言わずに預けるんだろ、俺に任せな」
「っ…そうだけど」
そう言って、俺は角に追い込んだ金魚を手前に切るようにすくう。
するとおわんの中に、金魚が元気よく飛び込んで泳ぎ出した。
「あ、とれた!え、すごいなんでなんで」
彼女は、意外にもはしゃぐようなタイプだった。
「任せなって言っただろ」
小さな袋に入れてもらった川田玲奈は、2匹の金魚が泳いでいる袋を手に持って歩く。
「ありがとう」
「いいよ、得意分野だから」
本当は、昔猛練習したんだよな、小遣い全部使い込んで。
「次、かき氷食べてみたい」
「いこ、あそこ、色が変わるかき氷だって、ここだけ限定らしいよ」
「気になる」
彼女は意外と楽しそうだった。
楽しくしてるように見えるだけなのか、そうなのか。
「かき氷、冷たいんだね」
「かき氷くらい食べたことあるだろ」
「無い、家で出てくる食事と学校の給食しか食べたこと無い」
彼女の家はかなり厳しい様だ。
「美味しいか?」
「美味しい、色が変わるって言ってたけど、これ掛けたらほんとに変わるのかな」
青色のかき氷が、なんと、紫になるらしいが、本当なのかと聞いたら、レモンシロップだから変わるんだって言われて、興味本位で買ってみた。
「掛けてみろよ、早くしないと溶けちゃうぞ」
「掛けてみる」
なんと紫色に変わった。