18時15分早めに付くと、彼女はまだ来てなかった。

20分、25分スマホの時計を何度も確認して、ようやく彼女がやって来た。

だが、俺の気配に気付く様子は無い。

なぜなら、いつも長い前髪を下ろし、眼鏡を掛けて、自分のことを僕と呼ぶ陰キャのフリをしているから、気付くはずが無い。

「川田さん」

そう俺が声を掛ける。

「誰、彼氏待ってるから、話がかけないでもらえる?用は無いから」

「俺、黒柳海斗だけど。間違ってないんだよな、実は」

「…は?代わりの人よこしたとかじゃ無くて、ほんとにあんたなの?」

彼女は疑った。

どう見ても、見えるはず無いんだよなぁ、このままじゃ。

「これで分かってもらえるかな」

そういって方から掛けていた小さなカバンからメガネケースを取りだし、黒縁のメガネを掛ける。

「たしかに、目元が似てる気が…いやでも、僕とか、陰キャだったじゃん、何、訳あり?」

「そ。ちょっと直したいことあって、陰キャのフリしてんの。でも、求められてるのは陰キャじゃ無いんじゃ無いかって思って、デートしたいんじゃ無いかなって」

「あんたの直したいことってナルシ?」

「え、なんでバレてんだ」

パれる要素あったか?

メガネをしまいながら、自分を怪しむ。