夫婦になった2人。

月を見ながら、ベッドサイドに腰掛け、寄り添い合う。

打ち寄せる波の音が聞こえる。




「綾人…?」


「どうした?苦しいか?」


「お願いがあるの…」


詩が、パジャマを脱ぎ始めた。


「詩…?」


下着姿で、恥ずかしそうに綾人を見つめる詩。



「綾人…お願い。私を抱いて」


「詩…」



「お願い。最期に言いたかったわがままなの。大好きな人と一つになりたい。このまま死にたくない」


医師として、今の状態の詩が性行為をすることは自殺行為だ。


しかし─


こちらに来てからも、どんどん落ちてきている心機能。


明日が来るのかもわからない状況だった。


「…わかった。しんどくなったらすぐに言えよ」


「綾人、ありがとう」


詩が酸素のカニューレを外す。


そっと下着を脱がせる綾人。


月明かりに照らされた詩の肌は、透き通るような白さで、信じられないほど美しかった。


数え切れないほどの点滴の跡。



白い肌に目立つ、長時間の蘇生処置で負った内出血や、火傷の跡。


闘病の証が痛々しかったが、それさえも詩の一部として美しかった。


「詩。きれいだよ」


綾人が優しく微笑みかけ、少し冷たい、詩の小さな唇にキスをする。



「んっ…はぁっ、はぁ…」


キスで少し息を止めているだけで、すぐに息切れしてしまう詩の様子に、綾人が我に帰る。


「ごめんな、詩。しんどかったな。」


「私は大丈夫。お願い…気を遣わないで…」


「いいんだな」


「お願い」



綾人が詩の頭に手を回し、優しくベッドに寝かせる。


肩や胸にキスしたあと、詩の色素の薄い乳首が口に含まれる。


「あ…きゃあ…」


綾人が体を触る度に、小さな悲鳴をあげる詩。


汗が滲む。


息が切れている。


つい詩の様子が気になってしまう。


「お願い…やめないで…」


潤んだ大きな瞳が綾人を見つめる。


「わかった」


優しく頷く綾人。



見つめ合い、キスをする2人。


舌を絡ませ合う、濃厚なキス。


指が隠部に入ってくる。


─ 酸欠で頭がクラクラするし、胸もズキズキする。


でも、体の中が、どんどん熱くなる。

とろけそうだ。



やっと綾人と一つになれるんだ。


神様。どうか、もう少しだけ、体をもたせて。


お願い…



「詩。愛してる」


体を重ねる2人。


綾人と詩はその日、ひとつになった。