「じゃあ、また遊びに来てね。今度はカップルでね」


家まで送ってくれた由羅。

颯太と付き合い始めたということを聞いており、詩は本当に嬉しかった。


「もう…恥ずかしいよ!でもまた会いに来るね。先生、詩のことよろしくお願いします」


「あぁ。由羅ちゃん、来てくれてありがとう」



由羅が帰宅し、綾人と詩は久しぶりに家で2人きりになる。


「さぁ、少し疲れたろ。ベッドに横になろうか」


綾人に支えられて、酸素ごとベッドに移動する。


横になる詩のベッドに綾人が腰掛けて聴診し、詩の酸素飽和度を測る。


「苦しくないか。SpO2は…問題ないな、よし」


優しく頭を撫でる。


「はぁ…家はいいなぁ」


詩が、寝心地の良いベッドに体を預けてしみじみと言う。


「本当に頑張ったな。詩」


綾人は詩を抱きしめた。


ガリガリになってしまった体。


─治すこともできず、結局体を痛めつけてしまってばっかりだったな。ごめんな、詩。


そんな綾人の心を読んだかのように、詩が話す。


「綾人。私を支えてくれて、どうもありがとう。綾人が私の主治医の先生じゃなかったら、こんなに頑張れなかった。そして、家に帰ろうって言ってくれて、本当にありがとう」


「…詩…いや、俺は」


「何もできなかったなんて考えないでね。綾人がいるから、私は今まで生きることができて、幸せに死んでいけるんだよ」


「詩…」


2人で泣きながら抱き合った。


辛すぎる状況の中だが、一緒にいることができる幸せを、2人は心から感じ合っていた。