「…詩。もう、頑張らなくていいんだ」


綾人が、静かに、声を震わせながら伝える。


「え…?どういうこと…?」



綾人の言葉の意味がわからず、聞き返す詩。



沈黙の後、綾人が続ける。



「詩の体は、もう治療に耐えられない」


「…!そんなことないよ…まだ頑張れるよ…!」



目覚めた時からの苦しさと、物々しい数の医療機器、綾人の様子から、言葉の意味はわかりつつも、詩は受け入れられず、泣いてしまう。



「ごめん、詩。お前を治せなかった。俺のせいだ」



「綾人…まだ…私まだ、頑張れるよ…!そんなこと言わないで…!」



「詩…落ち着いて聞いてくれ。余命は長くて3週間ほどだ。この部屋から出て、家に帰って、2人でたくさん、好きなことをしよう」


「いやだ…!綾人!なんで…!」



泣きじゃくり、呼吸が苦しくなる詩。



「詩!発作が起こるといけないから、落ち着いてくれ」



大声に気づいた萌音が部屋に入り、詩の背中をさすって落ち着かせようとする。


「いやだ、来ないで!みんな出ていって…1人にして!」


─心拍数がかなり上がっている。このままだと危険だ。


「永田さん。鎮静剤用意して」


「…はい!」




心臓の負荷を減らすため、鎮静剤が打たれる。



詩はすぐに抵抗できなくなり、眠り始めた。



綾人のPHSが鳴り、急患対応のため綾人は急いで病室を出ていったが、詩のバイタルの確認のため、萌音は部屋に残った。





「やだ…頑張ったのに…」



眠りながらも、詩は涙を流していた。



「詩ちゃん…こんなことって…神様…」


詩の手を握りながら、詩と綾人の気持ちを思い、涙をこらえきれず泣く萌音だった。