「じゃあ、今日はこれで終わるぞー」


「起立、礼ー」




帰りのホームルームが終わり、担任が教室を出ていく。


みんなが帰る用意を始めたものの、詩はすぐには席を立とうとしなかった。


目眩がどんどんひどくなっていたのだ。


─最近喘息は落ち着いてたのに、目眩が多いなぁ。お薬が合ってないのかな。


また次の診察の時にでも、相談しよう。




「詩!今日部活ないから一緒に帰ろ!」


「あ、うん!一緒に帰ろ」


ホームルームが終わったことに気づいていなかった詩は、由羅に声をかけられて急いで席を立つ。


その瞬間、詩の視界が大きく揺らぎ、目の前が真っ暗になった。


バタンッ



「…!詩!」


青白い顔で地面に倒れた詩を見て、由羅が驚きの声をあげる。



由羅の大声にクラスメイトが驚き、詩に視線が集まる。


異変を感じ取った颯太が詩の元に駆け寄る。



「おい、詩!お前大丈夫か!」



由羅が詩の手を握ったが、信じられないほど冷たく、由羅は呆然とする。


教室には既に先生の姿はない。


「…由羅、詩を保健室に連れて行くから、手伝ってくれ」

「う、うん!」


詩の意識が完全に無い状態なのを確認した颯太が、詩をおんぶする。


3階の教室を飛び出し、階段を降りる颯太と、詩が落ちないように支える由羅。


詩のこんな姿を見るのは初めての由羅は、涙を溜めながら保健室まで一緒に走った。