詩のベッドに馬乗りになり、詩の病衣をはだける綾人。


いつのまにか、骨だらけになってしまった体が痛々しい。


ぐったりと横たわる詩の胸に手を当て、心臓マッサージを開始する綾人。


「1.2.3.4.5……詩!起きろ!」


何度も強く、強く胸を押す綾人。



研修医時代から何度も行ってきた心臓マッサージだったが、まさか詩へ行う日が来るなんて。


詩の華奢で今にも壊れそうな体を、さらに鞭打つような行為。


何度も押している胸が内出血している。


詩をこれ以上頑張らせていいのだろうか。


自分がしている行為に吐き気を覚えながらも、それでも命を諦めることはできない。


心臓マッサージと人工呼吸を繰り返すが、詩は微動だにしない。


「詩、聞こえるか!目を開けろ!」


生気を失った詩の真っ白な顔に、綾人の汗が落ちる。


「ハァッ、ハァッ…詩、起きろ…!生きてくれ…!」



応援に駆けつけてきた、陸の足音が近づいてくる。



「長月さん!」


綾人が心肺蘇生をしているのを見て、詩が厳しい状態だと悟る陸。



「VFになって5分だ!」


綾人が叫ぶ。


「わかった!ショックかけるよ!」


陸が除細動をチャージする。


ドンッという除細動の音とともに、詩の体が浮き、ベッドに叩きつけられる。


いつも見慣れているはずの処置。


しかし、大切な人のあまりに痛々しい姿に、綾人は目を背けたくなる。


スタッフたちは、皆祈るような気持ちで心電図を見つめるが、波形は乱れたままだ。


陸が詩の脈をとる。


「……まだ触れないな」


「綾人、心マ代わるよ」


陸が綾人に変わり、詩に心臓マッサージを行う。