再び始まった抗がん剤治療。


今回も猛烈な吐き気が詩を襲った。



─今回は前回と違う薬と聞いたけど…でもやっぱり、一日中気持ち悪い…

誰か助けて。お母さんがいてくれたらな…
会いたいよ…


体力を落とさないように頑張って食べても、30分も経てばすぐに戻してしまう。


自慢だった長い髪もどんどん抜けてきたため、帽子無しでは生活できなくなった。


このまま死んでしまうのだろうか、という不安もつきまとう。


外に出て気分転換をしたいけど、できない。


無菌室が、牢獄のように感じてしまっていた。




しかし、どんな時も、綾人ら医療スタッフの前では弱音は吐かなかった。



頑張る。


絶対に、絶対に治す。


諦めない。



少しでも油断すると簡単に折れてしまいそうな心を必死に奮い立たせ、詩は病気と闘い続けた。