「詩ちゃん、ちょっと痛いけど頑張ろうね」


萌音が詩に優しく声をかける。


骨髄に針を刺し、髄液を取り出す骨髄穿刺がされようとしていた。



「…こわいよ…」


背中の針を刺す部位を綾人が消毒しようとすると、詩の体はとてもこわばっていた。


萌音が詩の手を握り落ち着かせる。


熱で体は熱いのに、手はとても冷たかった。



「大丈夫だ。麻酔も打つし、すぐに済むから、じっとしてろ」


怖がっている詩を前にして、綾人が声をかける。



本当は、詩の苦しむ姿なんて見たくない。


しかし、必要な検査だ。


綾人は自身の心を落ち着かせて慎重に針を刺す。




─骨を針で刺されている感覚がする。こわいよ。


「大丈夫よ。頑張ろうね」


涙ぐむ詩だが、綾人や萌音に迷惑をかけるわけにはいかないと、必死に耐えていた。




30分が経過して検査が無事に終わった頃には、熱のつらさもあり、ぐったりとしていた。



「詩。よく頑張ったな。しばらくゆっくりしてろ。検査に回してくる」


「うん…ありがとう…」


熱がまた上がっているのだろうか、瞳が潤み、つらそうな表情の詩に、胸が締め付けられそうになりながらも、急いで部屋を出る綾人だった。