私、成海奈々は、お父さんの仕事の都合で、高校二年生に上がるタイミングで、引っ越してきた。

小さい頃に一度住んでいた街で、懐かしさを感じた。

けれど、それと同時に嫌な記憶も思い出した。

この街は、とても霊が多いのだ。

特に病院や学校などは人が多く集まっているので、悪霊も多い。

私は気を引き締めて、新居へと向かった。

新しい家は、とても綺麗だった。

何ヶ所かリフォームできれいにしてもらったとお父さんが言っていた。

私はさっそく2階にある自分の部屋に上がった。

前に住んでいた部屋よりずっと広かった。

私の荷物はすでに私の部屋まで運ばれていた。

ダンボールから小説やマンガを出して本棚に並べた。

一通りダンボールから荷物を出して片付け終わった。

最後に、クローゼットに服をしまっていった。

クローゼットは奥行きがかなりあった。

奥まで入って見ると、引き戸のような物があった。

こんなところに小部屋でもあるのだろうか?

私は好奇心に負けて、引き戸を開けた。

中は小さな小部屋になっていて、小さい子が一人は入れる広さだった。

私は頭をぶつけないように気をつけながら、中に入った。

入ってすぐに何か硬いものを踏んだ。

「いたっ」

思わず声を上げた。

私はポケットからスマホを出して、ライトをつけた。

足元を照らしてみると、赤いクレヨンだった。

なんでこんなところに?

壁も照らして見ると、私は言葉を失った。

壁には、子供が書いたような字で、こう書かれていた。

『お母さん、ごめんなさい。ここから出して』

それが壁一面に書かれていた。

私は急いでその部屋から出て、引き戸を閉めた。

何も見なかったことにして、服をクローゼットにしまった。

気晴らしに、出かけることにした。

靴を履いて、玄関を出た。

外は桜の花びらがたくさん落ちていた。

まるで桜の絨毯の上を歩いているようだった。

私の家の近くは住宅街で、左隣には一軒家が、右隣にはマンションがたっていた。

私はなんとなく、このマンションからよくない感じがするのを感じた。

何か、人の気配がしない感じがするのに、誰かいるように感じたのだ。

「君、マンションなんか見て何してるの?」

突然、声をかけられた。

驚いて振り向くと、私と同い年くらいの男の子が立っていた。

「もしかして、今日引っ越してきたの?」

「はい。あの家に」

私は白い大きな家を指差した。

「俺は、隣の家に住んでる桐ヶ谷弘人。よろしく」