2人はまるで火と油。女王の命がなければ共に暮すことなど無かったはず。

「何故、私との結婚を承諾した? このままだと1ヶ月後には挙式だぞ」

「理由を教えねばならないくらい、貴女の脳は機能していないのですか?」

「ならば私達が結婚しなくてもよくなる魔法はないのか?」

「は、そんな都合のいい魔法などーー」

「あるのか!」

 両手をテーブルに勢いよくつき、身を乗り出すセミラ。

「あるはずないでしょう」

 振動を避け、横を向くミレトスだが何やら巡らせている様子。足を組み、顎に手をやる。

「賢者殿、やはりあるのでは?」

「聞こえませんでしたか? ありませんよ。はぁ、貴女(騎士)達は行き詰まるとすぐ魔術に頼り、考えるということをしませんね? 考えるのを止めてしまえば動物と変わりません」

 コツコツッとこめかみ辺りを人差し指でつつく。

「我々がその辺の犬や猫と同じだと?」

「なんなら犬や猫の方が利口なのでは?」

 青い瞳と黒い瞳がぶつかる。

「貴様らこそ、後方支援だとほざき前線には決して立たない。人の背中に隠れ、美味しいところだけ頂くーーハイエナみたいな集団じゃないか!」

 女王陛下に忠誠を誓う立場であっても、騎士と魔術師は相容れない。
 
「婚約、破棄にしますか? 貴女から」

「……それが出来ればどんなに楽か」

 このまま椅子を蹴り出ていくのは簡単。しかし、セミラの肩には騎士団の未来がのっている。血が出るくらい噛み締めつつ、着席した。