「陛下! 私は歴代の団長と変わらぬ忠誠を捧げ、この国に身を捧げる所存であります!」

 猛者が集う騎士団に女性が、それも団長として務まるのか、セミラは性別に苦しめられてきた。戦果を幾らあげようとも『女性だから』という響きが付いて回り、ヘリオトロープの片翼としての資質を常に疑われる。
 悔しかった、性別など投げ捨ててしまいたかった。

「賢者殿との結婚も女性としての幸せなど、これっぽっちも望んでおりません!」

 セミラは拳を作り、叫んだ。まるで魂の叫びだ。

「あぁ、セミラ!」

 ひとしきり思いの丈をぶつけ終えると、女王ヘリオトロープが駆け寄り彼女を抱き締める。

「わたくしは騎士団長を性別で選んだりしない!」

 セミラとヘリオトロープの年齢は近く、年頃の身の置き場に悩むのは一緒か。長く女王が統治するこの地であろうと、政(まつりごと)は男性中心になりがちだ。

「セミラなら困難や古い慣習も切り拓いていけると信じて、騎士団長に任命したの」

「陛下……」

 抱きしめ返してよいか迷いつつ、背中に手を回す。セミラの腕にすっぽり包まれるくらいヘリオトロープは華奢で、この細い肩に国の未来が乗っている。

 若き女性の重圧に比べればーーセミラは奮い立つ。騎士としてヘリオトロープを護りたいと改めて誓う。

「政略結婚を強いておいてだけど、幸せに男性も女性もないはず。セミラ、貴女は金獅子のごとく勇敢で逞しく、美しい。だから幸せにして貰うんじゃなくて、幸せを掴み取って頂戴!」

「はは、陛下は無茶ばかり仰る」

「ふふ、わたくしのワガママを共に叶えてる相方を紹介したはずよ?」

「……しかし、この気持ちが本物なのか、分からないのです。仕組まれたものかも」