そうやって今までやってきたんだから、今回だってきっと大丈夫。
そう自分に言い聞かせて、図書館の自動ドアを出たときのことだった。
「早葵」
私の心を誰よりも揺さぶるその声が、脳内に響いた。
「りゅう、せい…?」
気づけば、反射的に口に出していた。
流星が出口のすぐそばでしゃがみこんでいて、思わず息を呑む。
「…やっと名前、呼んでくれた」
嬉しそうに弧を描く唇が、目に焼き付けられていく。
隣にいる御坂も、このただ事ではない空気感に若干の戸惑いを感じている。
「っな…なんで、ここにいるの」
それでもなんとか声を振り絞って話しかけると、すくっと立ち上がってこちらに向かってきた。
「なんでって…早葵なら、ここにいるかと思って」
「は…?」
なに、それ…。
「…答えになってない」
「ふっ…うん。だね」
だね、って…そういうところ、昔から変わってないの?
私の質問にいっつも適当に返して、最後には楽しそうに笑う。
こんな不毛な会話は、もう飽き飽きしてるのに。
「でも…早葵に会いたくて来たってことだよ」
「っ…!」
その笑顔を見ただけで、こんなにも胸が苦しくなる。