「ひっどい顔」
教科書とノートを広げ、シャーペン片手に言ったこの美麗な男はいわゆるノンデリというやつ。
「うっさい」
「よくそれで外に出られたね」
…私の周りって、どうしてこうろくな奴がいないんだろうか。
彼の名は御坂 ひばり。
高一の頃からの仲で、唯一の男友達と言える存在。
女子の心なんて一ミリもわかっていない…というより、わかる気もないんだろうということが言葉の節々から伝わってくる。
綺麗な顔に似つかわしくない発言をするけれど、そんな御坂だからこそこっちも気を使わずにいられる。
ひばりのノンデリ発言だって今に始まったことじゃないしね。
「家にいるより、図書館の方が宿題も捗るでしょ」
「それはそう」
昨日、幸か不幸か流星と再会したけれど、会話という会話もろくにせず家に帰った。
自分でも驚くほどに涙が溢れて止まらなくって、情動を抑えられなくって。
朝起きて鏡を見たら、とんでもなく目が腫れていた。
化粧で少しは誤魔化したけれど、目ざとい御坂には1発でバレてしまったらしい。
今は夏休みの宿題を消化すべく、近所の図書館で絶賛勉強中。
…正直、宿題なんてしてる場合じゃないんだけど。
昨日拾ったお守りだって神社に届けないといけないし。