「待って」
寸前のところで止められた。
「それは、あそこに行ってから話そう」
流星が指さすその先を視線で辿ると、そこには展望台があった。
「もう一ヶ所だけ、付き合って」
…不完全燃焼だけど、仕方ない。
喉まで出かかった言葉をまた飲み込んで、会計を済まし店を出た。
一時間ほどバスに揺られて、やってきた先はさっきあのカフェから見えた展望台。
カフェでかなり話し込んでいたらしく、着いた時には7時半手前だった。
バスの中では二人とも一言も喋らず、ただただ隣の流星の存在だけを意識していた。
「…俺ね、ほんとうに後悔したんだ。早葵と、もっとちゃんと話しておけばよかったって」
辺りに人はおらず、日が落ちた展望台はあまりにも暗い。
それでも流星の話に耳を傾け、受け止める。
この一分一秒が惜しいから、少しでも長く流星だけを感じていたい。
「本当に自分勝手なのかもしれない。でも…今度こそ言わせて欲しい」
辺りは静寂。
音一つない、二人きりの世界で。
「早葵のことが、今でも大好き。また…俺と付き合ってくれませんか」
その一言が、涙腺を崩壊させた。