「何度も早葵に電話しようって、会いに行こうって思ったけど…このことを話したら、早葵がどう思うだろうって考えた」


「私が…?」



すぐに連絡くれればよかったのに…って言葉を飲み込んで、代わりに流星の言葉を待つ。



「この話を早葵にしたら、見ず知らずの俺のおばあちゃんを心配して、俺と会うのを我慢するでしょ。…でも、いつ帰れるかもわからないし、結局は寂しい思いをさせちゃう。だったらいっそ…」



“俺のことを忘れて欲しいと思った”。



いつになく真剣な流星を見たら、それが本気であったということが嫌でもわかる。



「っ…なに、それ」




「…勝手でごめん」



…なんて、言えばいいのかな。



たしかに、逆の立場だったら私もそうしているかもしれない。



だから、流星の気持ちもわかるよ。



わかる、けどさ…。



「…っ勝手すぎるよ」



そんなことされたら、余計に忘れられなくなるに決まってるのに。



「…うん、ほんと自分勝手だったね」



それからしばらく、この街で流星がどんな風に過ごしていたのかとか、おばあさんの様態のこととかを聞いた。



おばあさんは今のところ安定しているけれど、安心できる訳では無いらしい。