ジト目の流星に「つい…」とこぼす。
だって、今までこんなあからさまに女の子扱いを受けたことがなかったからちょっと気恥しい。
「早葵はこういうの嫌い?」
「うっ、ううん…嫌いじゃないよ。ちょっと恥ずかしいってだけで…」
「ふーん…」
あ、また口に出しちゃった。
言うつもり無かったんだけどな…と、またもや後悔していると、繋がれた右手がクイッと引っ張られた。
「じゃあ、このまま離さないよ?これからは俺にエスコートさせて」
得意げに微笑む流星の上がった口角。
触れられている手から伝わる温度が、全身に駆け巡るようで。
「っ…」
今日一日で、昨日の涙もカラカラになってしまうほどに幸福感で満ち溢れている。
好きな人と過ごす時間がこんなにも尊いものなんだと、改めて実感した。
「…早葵は、ここがどこかわかる?」
改札を出てすぐのこと。
外の風景を気にしていたらそんな質問が飛んできた。
「ここ…?」
『風浦駅』と書いてある看板は見たけれど、そういうことを言っているんじゃないことはわかる。
「…初めて来た。流星は来たことあるの?」
まさか、当てもなくこんなところまで二時間もかけてきたわけではないだろう。