さらに女性は、泣き崩れるように声を出した。
「この神宮寺家は昔から、双子が生まれると災いが起きるという言い伝えがあってね…その言い伝えから、貴女を他に出すしかなかったの…許して欲しいわ…」
「…そ…それって…私の両親は…」
女性は溢れる涙を拭いながら、私の顔を見た。
少しの沈黙の後、震えた声をだしたのだ。
「…あ…あなたの実の母親は、私なの…ごめんなさい…」
頭が真っ白だ。
何が起こっているのか分からない。
「で…では…育ててくれたのは…本当の両親ではないの?」
女性は静かに頷いた。
「…そう…育ててくれたのは…ここで働いていた女性とその夫なの…」
私はショックから目の前が真っ暗になってしまった。
吐き気がする。
お父さんもお母さんも本当の両親では無かったなんて信じられる訳もない。
信じられない…。
あんなに優しい父も母も本当の両親ではなかったなんて…。
なぜか私はポロポロと涙が頬を流れていた。
自分でもこの涙の意味が、悲しみなのか、驚きなのか、感情が分からない。
ただ、大きすぎる衝撃に頭が追い付いていないのだ。
女性が言った話がすべて事実であれば、姉妹はここに居るのだろうか。
もし居るのなら、今すぐにでも会いたい。
「では…私の姉妹の“恵さん”は何処にいるの…?」
女性は目を閉じて暫く何も言わなかった。
少し時間が経った頃、静かに目を開けた。
「…恵は、先日…亡くなりました。」
こんなことがあって良いのだろうか。
やっと事実を知れたのに、姉妹はもういないなんて、酷過ぎる話ではないか。
何もかもが、信じられない。
その時、私の脳裏に一つの疑いが浮かんだのだ。
まさか、双子の姉妹が亡くなったので、代わりに私がここに連れてこられたのではないだろうか。
「…そんな…それで…まさか…私が代わりに呼ばれたの…?」
女性は静かに私の手を取り、自分の手と重ねた。
「勝手な事ばかり…本当にごめんなさい…神宮寺家の跡取りとして、貴女を呼び寄せるしかなかったの…」