頭がパニックになりながら、私は家に到着した。

「恵美さん、おかえりなさい。学校はどうでしたか。」

リビングでは母が紅茶を飲みながら、本を読んでいた。

「あ…あっ…あの…伺いたいことがあります!」

「どうしたのですか?そんなに慌てて、とりあえず座って、紅茶でもいかがかしら?」

ゆっくり紅茶を飲めるはずがない。
龍崎と早乙女のことは、皆が知っていることなのだろうか。

「お母さん、聞いてください!!」

私は先程の出来事をお母さんに全て話した。
もちろん、龍崎と早乙女のことも全部だ。

しかし、お母さんは慌てることなく、静かに目を閉じた。

「龍崎と早乙女の本当の姿を、知ってしまったのね…あなたの見た事は、信じられないかもしれないけれど、すべて現実なのよ。知ってしまった以上は、詳しく話をしないとならないわね。」

お母さんは全て知っていたのだ。
さらに、これ以上何か秘密があるというのだろうか。

お母さんが、何を言おうとしているのか、聞くのが恐くなる。
緊張で口が乾いた私は、目の前に置かれた紅茶を一口ごくりと飲み込んだ。

お母さんは、私を見つめてゆっくり話しだす。

「龍崎と早乙女はね---------」

その内容は、想像以上だった。

もともと神宮寺家は、神に仕える家柄で古くから天使と悪魔に深いつながりがあるという。
元々は天使と悪魔は兄弟だったと言っている。
神に逆らった兄は悪魔となり弟は大天使となったそうだ。
そして、数百年に一度、神からのお告げがあるのだという。
そのお告げは私達双子が生まれた日に伝えられたそうだ。
双子の女の子どちらかを天使か悪魔に嫁がせるようにと…。

「お母さん、もしかして嫁ぐのは…私達双子のどちらかと言う事なの?」

「元々は神宮寺家に残った惠が嫁ぐことになっていたの、でも惠が亡くなってしまったので、貴女が嫁ぐことになるのよ。」

頭が混乱しそうだ。
そもそも、天使とか悪魔とか意味がよく分からない。

もしも、現実だとしても、私が天使や悪魔に嫁ぐなんて考えられない。

「恵美、急ぐことではないから、安心してね。」