ディナーの席で私は母の目の前に座った。

いくら母親だと言われても、数時間前に会ったばかりだ。
なぜか、少し緊張もするし、何とも言えない気分になる。


母はしばらく何も話さず、私を優しい瞳でじっと見つめている。
その瞳には、また涙がだんだんと溜まっていくのが分かる。


「まず…何からお話ししましょうか…」


母はゆっくりと話し始めた。


「まずは…気になさってるようなので、恵美さんの学校の事かしらね…」

「…はい。」

私が一番知りたかった内容だ。
早乙女が伝えてくれていたようだ。

何を言われるのか、少し恐い気もする。

「高校へは、ここから通ってもらえないかしら…もちろん龍崎か早乙女に送らせるわ…」

「私は、今までの学校に通って良いのですか?」

「もちろんよ…今までの学校を変えろなんて言わないわ。」

私は別の学校に転校するように言われることを覚悟していた。
しかし、元の学校に通って良いと母親は言ってくれたのだ。

思わず口元が緩むほど嬉しかった。

学校に行けるということは、友人達にもまた会えるのだ。
住むところが変わっても、学校では今までの通りと言う事だ。


「あ…ありがとうございます。」

さらに母は微笑みながら言葉を続けた。

「それから…大学受験もあるわよね?勉強は龍崎と早乙女が見てくれるので、安心してね。」

「大学に行っても良いのですか?」


母は微笑んで頷いたのだった。

「それから…お父様は来週中にアメリカから戻られます。貴女に会えることをとても楽しみにしているわ…」


私の本当のお父さんに会える。
もちろん会いたいが、なんだか恐いようにも感じる。

本当の父親はどのような人なのだろうか。