暫くすると、部屋をノックする音がした。

“トン、トン、トン”

「恵美様、ご昼食をお持ち致しました。」

早乙女が昼食を持って来てくれたようだ。

「…はい。お願いします。」

部屋に入って来た早乙女に、泣いた顔を見せたくなかった私は、俯いたまま動かずにいた。

「…恵美様?如何致しましたか?」

「な…なんでもありません。」

すると、いきなり早乙女はしゃがみ込み、私の顔を覗いた。

「…恵美様…突然このようなところに連れてこられて、無理もないですよね。」

早乙女は静かに頭を撫でてくれる。
少し不安が和らぐような気がした。

その優しさに涙がさらに流れ落ちる。

私は無意識に、早乙女に抱き着くようにして、大きな声で泣いていた。
早乙女はそんな私の頭をずっと撫でてくれていたのだ。


少し時間が経ち落ち着いてくると、自分の状況に気が付き急に恥ずかしくなった。

私は早乙女の胸から、勢いよく離れた。


「--------ご------ご------------ごめんなさい!」


顔から火が出るほど恥ずかしい。

そんな私に早乙女は優しく微笑んでくれる。


「恵美様、いつでも泣きたいときは私の腕の中をお貸ししますよ。」


「---------い----いいえ----もう大丈夫です。」


真っ赤な私の頬に、早乙女はチュッと音を出して口づけた。


「--------------え-------えええ」


急なキスに私は、またしても爆発寸前だった。

しかし早乙女は、そんな私をまったく気にせずに昼食の用意を華麗な手捌きで始めた。


(…龍崎も早乙女も!!なんなの…この人たちは!…)