『仕方ないですよ。あの人の方が
 一枚も二枚も上手ってことなので。
 超えられるようになったら
 逆転すればいいんじゃないです?』


『ひっでー。誰か俺のこと癒して
 くれる天使は現れないもんかね?』


お礼を伝えにきたのに、
2人のやりとりに朝から笑いが出て
さらに元気になってしまう


本当に筒井さんの周りには
いい方ばかりが集まっている。


始業時刻が近づき受付に戻ると、
佐藤さんにもきちんと謝り
また1日が始まった。


もうあの女性は来ないと分かっていても
黒い車がエントランスに入って来るたびに体が強張っているのがわかる


去年八木さんに傷つけられた時と
少し似てるけど、当事者に会うと
体が強張って動けなくなっていた。


私は全く気付かなかったけど、
あまりに八木さんと会わないから
おかしいなと思っていたら、
昨年末で退社されていて驚いたのだ


どうしても同じ会社にいれば
すれ違うことだってあるから
内心不安ではあったけど、このことは
人事的なことで公にはできないので
退社理由は分からない



『井崎さん大丈夫?
 休憩行く時間だけど行けそう?』


「はい、今日はそこで休みます。」


一階の休憩スペースを指差すと、
頭を下げて休憩に入らせてもらった。



ふぅ‥‥思ったよりもトラウマかも。


罵声や人を傷つける言葉は、
時としてずっと心に有り続けて
しまうからツラい‥‥


筒井さんに会いたい‥‥


無理だとわかっていても、
やっぱりこんな時そばにいて欲しい。


こんな甘えた考えを誰にも言えないし、
恥ずかしいけど、怖いものは怖いのだ


スマホを取り出して、筒井さんからの
メッセージを見ようとしたら、メールが
届いていて画面をタッチした


--------------------------------------------------
 
 何かあったらこっちが夜でも
 構わないからすぐに連絡しろ。
 拓巳からじゃなくお前から
 頼られたいからな‥‥。
 だから我慢だけはしないと
 約束して欲しい。 
           
--------------------------------------------------