悪い子ではないと思っていた。
だからこそ、このメールの内容は
頭をガツンと殴られたような衝撃で
そのあとどうやって家まで帰って
来たのかも分からないほどのショックを
感じたのかもしれない


ずっと泣かずに前だけ向いて来たけど
やっぱりツラい‥‥


こんな時‥‥
筒井さんがいてくれたら‥‥


そばにいる人じゃなくて
居ない人を心が求めてしまう




黙って抱き締めてくれただろうか。
それとも鼻を思いっきり摘んで
叱ってくれるのかな‥‥‥


会いたい‥‥



今すごく会いたいです‥‥




引き出しから筒井さんから貰ったままの
ハンカチを取り出すと、そこに涙が
ポタポタといくつもシミを作り
両手でそれを抱き締めた



ブーブーブーブー


ビクッ!!!


電話?‥‥誰からだろう?


電気もつけていない部屋で、
鞄の内ポケットが光り、涙を手の甲で
拭いながら取り出して出た




「‥‥もしもし」


鼻声なことがバレないようになんとか
平静を装って声を出す


久しぶりにこんなにも
コントロール出来ず泣いてしまったから
相手に声色で伝わると申し訳ない。





『‥‥‥‥‥泣いてるのか?』


ドクン


えっ?


‥‥‥なんで?


私が会いたいなんて言ったから、
幻聴でも聞こえてきてるの?


そっと耳からスマホを離して
画面を見ると、記されていた
名前にまた涙が一筋流れていく



「‥‥‥筒井さ‥っ‥筒井さん‥‥
 筒井さ‥‥だ。」





1番聞きたかった声なのに、
元気な声を届けることが
出来なくて悔しい‥‥


それでも止まらない涙に
ハンカチで目元をグッと押さえる



『フッ‥‥‥何度も呼ばなくても
 聞こえてる‥‥‥だから泣くな。』


筒井さんだ‥‥‥
本当にこれは夢じゃないんだ‥‥



日本から遠く離れた場所から
届く声が愛しくて胸が苦しいほどに
締め付けられてゆく


泣きながら何度も何度も
首を縦に振り頷きながら
筒井さんのハンカチを握りしめる



「‥グス‥‥お元気ですか?」


『ああ‥‥‥‥お前は?』


「元気です‥‥グス‥
 今元気になりました‥‥だからもう
 大丈夫です。」



『‥‥‥‥』


なんで半年も経った今、私にこうして
電話をくれたのかなんて分からない。


でも、聞こえてくる筒井さんの声に
安心して、さっきまでの不安なんか
どうでもいいとさえ思えてる



「筒井さん‥‥‥」


『どうした?』


「いえ‥‥‥‥。
 声が聞けて嬉しかったです‥‥。
 お忙しいのにお電話くださって
 ありがとうございます‥。
 お体に気をつけて過ごされて
 ください。私も頑張ります。」


国際電話の料金はバカにならない。
筒井さんに負担がかかってしまうのが嫌で、電話を切らないとと思った。