「も、もしもし‥‥こんばんは。」


『(フッ‥‥こんばんは。)』


耳元に届く愛しい人の声に、感動して
いると、私を見る3人の視線に
耐えられずに席を立ちパウダールームに
続く通路まで移動した。


顔が熱いからきっと真っ赤だと思う‥


『(今日も強引に誘われたんだろ?)』


「はい、蓮見さんと伊野尾さんに
 連れてこられました。」


煙草でも吸っているのかフーッと
笑いながら息を吐く呼吸さえ
愛しくて、瞳を閉じた。


『(‥お前の声が聞けて良かった。
 仕事に戻らないといけないから、
 また今度はこっちから電話する。
 飲みすぎるなよ?)』


「私も嬉しいです‥‥はい、
 飲みすぎません。電話も無理せず
 で構いませんから‥‥」


『(‥‥俺がお前と話したいんだよ。
 いい子で待ってろ‥‥じゃあな。)』


ドクン


短い通話の中だけなのに、
心臓がこんなにもドクドクと煩い‥


私も‥‥もっと声が聞きたい‥‥


恥ずかしくて伝えられなかったけど、
きっと顔を真っ赤にしている私のことなんてお見通しなはず


顔の火照りを落ち着かせてから
部屋に戻ると、蓮見さんにスマホを
返した。


「ありがとうございました。」


『んー?どういたしまして。』


ニヤリと笑った蓮見さんに
悟られないように席に着くと、
お腹が空いていたので美味しい料理を
沢山頂いた。



『井崎さんって滉一の彼女なの?』


「ブッ‥ゴホッゴホッ!!」


本日2度目の動揺と共にむせる私の
背中をトントンとさすってくれる
亮さんがお水を手渡してくれる


肘をついて興味津々に尋ねるジュニアに
なんて答えていいか分からない


大切にしてくださってるし、
そういうことも色々してるけど、
いざ恋人とか彼女とかのような
表現をされるとそうです!と言って
いいのか不安になる


筒井さんに迷惑がかかるのだけは
なんとしても避けたいから‥‥


『翔吾、そういうのは察しろ。
 井崎さん大丈夫?』


亮さん‥‥


涙目になった為ハンカチで目を
押さえると、ジュニアと目が合い
ニコッと笑われた。


『察しろ‥‥か。じゃあよく分からん
 から、井崎さんと友達になろうかな』


「と、友達なんて‥そんな無理です!」


お水をもうひとくち飲むと、
全力で否定をした。


影響力がある人とこれ以上深く
関わるのは怖すぎる。
筒井さんも勿論だけど、八木さんの
時のような事になるのも怖いから。



『向こうに帰るまでだからいいだろ?』