8時近くまで眠ってしまった私は、
激しい行為にベッドから立てず、
帰国する準備をする筒井さんを
横になりながら眺めていた。


空港まで見送りに行くのは話し合って
辞めたのだ。


ここから見送って、またここに帰って
来たいと言ってくれたから。



2人で最後に一緒にお風呂に入り
遅めのブランチを食べた後、
冷蔵庫の中身も片付けていると
ベランダで煙草を吸う筒井さんを
キッチンから眺めた。


明日からいないのに不安じゃない‥


普段からものすごく言葉が
多い筒井さんではないけど、
大事にしてもらえてることが
伝わり過ぎた1週間だったから
心がとても穏やかで満たされている



『‥‥そろそろ行くよ。』


スーツケースを転がしながら
玄関まで行く筒井さんと手を繋ぐと
もう一度その場で抱きしめられ
私もその胸にもたれて瞳を閉じた



「筒井さん‥‥
 お体に気をつけて過ごしてください。
 行ってらっしゃい‥‥。」



『お前も‥‥元気で。行ってくる。』


笑顔を向けると落とされたキスの
温もりと共に筒井さんはまた
旅立って行った。


良かった‥‥‥
泣かずにまた見送ることが出来たから。


次また会える日まで、
頑張らないといけないことがいっぱいだ



筒井さん‥‥
その日までどうかお元気で‥‥


雲一つない青空を眺めながら、
遠くへ旅立つ筒井さんに想いを届けた



「おはようございます。」


『井崎さんおはよう。』


GWも明けて、受付は相変わらず
2人体制のまま総務課には新しい
新入社員は入らないものの、
山崎さんが少しずつ復帰される
ことになったのだ。



「受付には戻られないんですか?」


『受付はね、年齢制限や色々な
 規定があるのよ?』



えっ?
私は筒井さんの推薦みたいなもので
あまりよく分からずここに配属に
なってしまったから案外分かってなかったのかもしれない。


『未婚者と既婚でもお子さんがいない
 場合は30歳を迎えるまで。
 20代でもお子さんがいる場合は
 ここには立てないのよ。
 お子さんの急な体調の変化や、
 子供行事などが多いことなどで、
 急な欠勤になると回らなくなる
 から仕方がないのよ‥‥。』


「そうなんですね‥‥」


24歳の私でもあと6年もしたら
受付には立てないんだと思うと
色々考えさせられた。