後ろから抱きしめられると、
首筋に顔を埋めた筒井さんの唇が
そこに触れてくる


「お酒をあんなに飲まれたんですよ？
　シャワーだけにしてください。」


いくらお酒に強いからといって、
お風呂に浸かるのは危ない気がする。


一緒に入るのは恥ずかしいけど、
明日が最後だと思うと、この思いも
否定したくない。



もう一度首筋に唇を落とすと、
手を引かれて一緒に浴室へ向かった。


さっとシャワーを浴び終えた筒井さんを
直視出来ずにいた私を見て
笑っていたけど、1人で浸かりながら
色々と考えた。


10000キロ近く離れた場所から、
頻繁に帰って来れるなんて思わない


蓮見さんも言ってたけど、
相当無理してこの休みを取ったはず。


一緒にいたいと言ってくれたのに、
あっという間に時間はどんどん
過ぎてしまった。


帰国されて筒井さんにちゃんと
楽しかったって思って貰えたのか
今更ながら心配になる



‥‥ダメだ‥のぼせそうだから
一旦お風呂から出よう‥‥


いつものスキンケアを入念に行い
髪の毛を乾かし終えると、
ベランダで煙草を吸う筒井さんを
見ながら、ミネラルウォーターを
沢山飲んだ。


『まだ眠くないならこっちにおいで。』


いつのまにか片付けられていた
リビングに向かうと、筒井さんの隣に　腰掛けると、腕を引かれてそのまま
筒井さんの腕の中に閉じ込められる


石鹸と微かな煙草のフレーバーに
包まれながらも、温かいその場所で
瞳を閉じた


『Joyeux anniversaire Kasumi‥』


えっ？


いきなり耳に届いたフランス語に、
もたれていた体を起こす。


綺麗な整った顔で優しく笑うと、
私の頬に触れた手が頭を撫でていく


日付が変わって5日になっていたんだ‥


フランス語で誕生日おめでとうなんて
言ってもらえるなんて思わなかったから
とても嬉しい‥‥


「筒井さんに直接言ってもらえるなんて
　思っても見なかったので嬉しいです。
　ありがとうございます‥‥」


『これは俺からお前に‥‥』


えっ？


掌の上に乗せられたリボンがかけられた
箱に、思わず筒井さんを見上げる。


「開けてもいいですか？」


『ん‥‥いいよ。』


丁寧にリボンを解いてから、
箱を開けると、そこに入っていたものに
驚いてまた筒井さんを見てしまった



『‥‥‥また泣いた。』