好きな人に綺麗になったなんて
言われたら嬉しくないわけがない


お酒のせいなのか涙腺が弱く、
瞳に涙があっという間に溜まり
目尻から涙が頬を伝う



『褒めたのにどうして泣くんだ?』


親指でゆっくりと涙を拭う手に
目をギュッと瞑ってから筒井さんを
見て笑った


「もしそう感じて貰えたなら、
 筒井さんがいるからです‥‥」


見られているのが恥ずかしくて
俯くと、すぐに顎を捉えられ
上を向かされてしまう


『ちゃんと言わないと伝わらない‥』


トクン


真っ直ぐこちらを見つめる瞳が
目の前にあり、また心臓がドクドクと
煩い音を鳴らし始めていく



「‥‥‥ランニングもヨガをするのも、
 髪の毛を伸ばして大人っぽく
 なりたいと思うのも筒井さんと
 また会えた時に綺麗になったって
 言ってもらいたいからです。
 グス‥‥だから‥頑張ったから
 言っていただけて嬉しくて‥‥」



外見ばかり磨いても、
結局中身が全く成長していないし、
泣いてばかりで困らせてしまう


こんなにも早く会えるなんて
思わなかったからまだまだ成長段階
だけど、この半年が報われた気もして
安心したのだ


『綺麗だよ‥‥出会った時から
 変わらずな‥‥。
 じゃあ‥明日の朝一緒に走るか?』



「本当ですか!?ランニングウェア
 持ってきてるんです。」


『フッ‥‥泣いたり笑ったりと
 忙しいヤツだな。』


「えっ?あ!痛っ!!」


嬉しそうに私の鼻を摘むと、
ゴクゴクとビールを飲んでから
喉を鳴らして笑っていた



筒井さんが帰られるまであと2日。
色んな顔を見ておこう‥‥


こんなふうに笑った顔も、
さっきみたいな真剣な顔も‥‥





「筒井さ‥‥アッ‥‥明日‥‥ンンッ‥
 ランニング‥‥ンッ‥‥」


『フッ‥手加減する。
 お前を‥抱き足らなくてな‥‥』


「ア‥‥アアッ!!」


意地悪な顔も
息が荒く気持ちよさそうな顔も
私を見下ろす優しい顔も全部ぜんぶ
沢山見ていたい‥‥



その日は優しく抱かれたものの、
その後足に力が入らず、お風呂場まで
一緒に行きグッタリする
私を抱えたまま2人で湯船に浸かり
朝までまたぐっすり眠った。


眠る時間さえも勿体無いと思うけど、
この温かい腕の中にいる時間も
大切に覚えていたいと思える



『よし‥‥準備できたなら行くぞ?』


「はい、大丈夫です。」