2杯も飲んでしまったから
顔が赤くないか心配だったけど、
一安心してから筒井さんと中庭に出て、
そこから本館の方の美しい庭にも行き
散歩しながら過ごした


「夜も綺麗ですね‥‥」


昼間とは違い、淡いライトで照らされた
建物やお庭は幻想的でさっきよりも
とても美しく感じられる


『寒くないか?』


「はい、ありがとうございます。」


時折吹かれる風を感じながらも、
離れまで戻ってくると、食事が
片付けられていて、縁側で筒井さんと
温かい緑茶を飲みながらお庭を
眺めていた。


『まだ眠くないか?』


「はい、マッサージで2時間近く
 眠ったので意外にまだ大丈夫です。
 筒井さんこそ休んでくださいね?」


私はこの旅行が終わってもまだ数日
休みがあるけど、いつ向こうに
戻ってしまうんだろう‥‥


怖くて聞けない‥‥‥



『まだお前の顔をちゃんと見れて
 ないからな‥‥』


「えっ?‥‥ウワッ!!」


椅子に腰掛けていた私を簡単に
抱っこすると、有無を言わさず
寝室に連れていかれ、そのまま
ベッドに降ろされた。


あまりに突然の出来事で、
一気に心臓の音が早くなり、
薄暗い空間でルームライトをつけた
筒井さんが、私の頬を両手で包んだ


綺麗な顔立ちの切れ長の瞳が
至近距離で私の目を捉えると
少しだけ悲しそうに笑い俯く


『‥‥‥想像と全然違うな。』


えっ?


もう一度私を見た筒井さんが
触れていた手でゆっくりと髪や瞳、
鼻筋や唇に触れてくる


静かな空間にただただ私の心臓の
音だけが響き、動くことすら出来ず
ただただ筒井さんの顔を見ていた



『フッ‥‥‥‥お前‥綺麗になったな。
 少しは宣言通り
 大人っぽくなったんじゃないか?」


「綺麗って‥‥な、何言って‥」


『霞‥』


ドクン


久しぶりに呼ばれた名前に、
泣きたくなかったのに目頭が熱くなり
あっという間に涙が溢れる


またこんな風に呼んでもらえる日が
来たことだけでも奇跡なのに、
筒井さんに綺麗になったなんて
言ってもらえるなんて‥‥


あなたが居ない毎日が寂しくて
物足りなくて‥‥でも頑張るって
決めたから今日までやってこれた


でも本当はこんなふうにそばで
寄り添っていたい‥‥


この温かい手で触れて欲しい‥‥


そんな色々な感情が一気に湧いてしまい
涙を止めることが出来ないのだ


「‥‥‥‥会いたかったです。
 とても‥‥‥本当に会いたかっ‥」


そこまで言うと、大好きな腕の中に
閉じ込められそのままベッドに
押し倒された。



『抱くぞ‥‥』